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2025.06.05

広松由希子のこの絵本のココ! 第11回 2024年 見逃せない注目絵本 特別編7

第11回 2024年 見逃せない注目絵本 特別編7

MOE2025年2月号(バックナンバー発売中)の巻頭特集「第17回MOE絵本屋さん大賞2024」にて、2024年の注目の新刊絵本、惜しくもランクインを逃した絵本などについて、広松由希子さんにお話しいただいた記事の完全版を分割してお送りします。
 

着る

 

『なつのおそろいをつくりに』石井睦美/文 布川愛子/絵 ブロンズ新社
 

 いくつになっても可愛い洋服を着ると気分が上がりますよね。『なつのおそろいをつくりに』は、シリーズ4作目ですが、やっぱり根強い人気。「おそろい」っていうのも、女の子のツボですね。

 


『あなたに ぴったりのふく つくります』小渕もも/作 岩崎書店
 

 この本とあわせてピックアップしたいと思ったのは、『あなたに ぴったりのふく つくります』です。「ぴったり」の似合わせがやはりツボで。相手に合わせて、素材を選んだり、形を考えたり、型紙が出てきたりするのが、手作り好きにはたまらないでしょう。私も子どもの頃に読んだら、絶対ハマったと思う。

 


『おやすみまくら』斉藤倫 うきまる/文 牧野千穂/絵 小学館
 

 その「ぴったり」の延長で、お洋服じゃないけれど、身につける感覚に近いかな。『おやすみまくら』の枕は、やっぱり着心地に近い触り心地がだいじ。自分にぴったりの枕を想像するのが楽しい。牧野千穂さんの絵が気持ちよく、眠りに誘ってくれますね。
 

 

脱ぐ
 

 「着る」の反対語で「脱ぐ」というテーマにしちゃいましたが、本のカバーのこと。表紙のカバーを脱がせると面白いよ……という絵本群です。
 


『HIDE & SEEK まぼろしの雲豹をさがして』鄒駿昇/作 東山彰良/訳 工学図書
  

 今年のカバー賞はこれでしょうか……『HIDE & SEEK まぼろしの雲豹をさがして』。国立台湾博物館の監修で作られた、絶滅したといわれる雲豹を巡る壮大な話なんですが、窓の開いたカバーの色が各国の翻訳版で違うらしいです。台湾の原書はもっと緑が濃いイメージでした。カバーを脱がせると、窓から見えていた景色がぐるっと広がり、思わずほうっとため息が漏れます。カバーに裏打ちのコーティングがされていて、窓の部分も簡単にはちぎれなさそう。見返しも美しく、内容と合わせて長く愛でたい絵本ですね。

 


『ガラガラ がらくた!?』エミリー・グラヴェット/作 なかがわちひろ/訳 BL出版
 

 『ガラガラ がらくた!?』は、2024年9月下旬の刊行で、MOE絵本屋さん大賞の年度の境目でしたね。エミリー・グラヴェットは裏表紙に穴を開けた『もっかい!』とか、常識破りな造本をいろいろやってくれる作家ですけれど、 今回のカバーソデの凝った切り込みもすごいですよね。脱がせると本体表紙も、さらにカバー裏まで素敵。いい意味で、図書館泣かせの本が増えましたよね。このカバー絶対脱がせたいし、裏も見ないとだし。そして カバーを脱がせたら、前見返しと 後ろ見返しもじっくり見て。本文も面白いんですけど、本文以外にいろんな遊びがあるので、ぜひ脱がせて着せて隅々まで矯めつ眇めつ見てほしい。奥付の遊びとか、カバーのバーコードの位置ってここでよかったんだ……とか。発見が尽きません。

 


『まっくらぼん』ながしまひろみ/作 岩崎書店

 

 『まっくらぼん』は、カバーじゃなくてカバーみたいに太い帯ですが。脱がすと表紙の顔がすっかり変わっちゃうんですよね。最近こういうカバーに代わる帯の装丁って増えていますが、図書館の蔵書だと、多くは外しちゃうのかな。「MOE」の新刊紹介のページでも、カバーはそのままだけど帯は外して撮影しますよね。でもこの帯がないと、ひとつ損しちゃう。あ、帯を脱がせるとこんな顔なんだって自分で脱がして気づく喜びがなくなっちゃう。できれば本屋さんで買って見てね、という絵本です。 

 


『かばん』こみねゆら/作 講談社

 

 もう1冊、こみねゆらさんの『かばん』を。これは可愛くておしゃれな小ぶりの本で、テーマからすると「着る」本なんですけど、 あえて「脱ぐ」に入れたのは、この本、カバーが重要なポイントなので。反則技ギリギリの画期的な本だと思うんですよ。絵本をたくさん読む人でも、本文を読んだらおしまいという人が意外と多いですよね。でもこの絵本の場合、最終ページでは終わらない。カバーの後ろそでのカットに目を止めてほしいんです。そこから、裏表紙を見ると、納得のうれしい結末があるんですよ。
 ここまで読むと面白いんですよーって、ある絵本の選書会で力説したんですけど、「カバーは図書館とか外しちゃうんだから、だめよ」って却下されて残念でした。これをこのままの形、小さい手のひらにぴったりのサイズで、カバー付きで見つけた子どもはうれしいだろうな、もったいないなって思いました。これは絶対、カバーを脱がせて捨てないでね、という本。小さなものを愛しむこみねさんの手技が、こんなカバーの端っこに見られたとき、私はすごくうれしかった。


 

次回へ続く)

 

広松由希子(ひろまつゆきこ)/絵本の文、評論、展示、翻訳などで活躍中。2017年のブラチスラバ世界絵本原画展(BIB)国際審査員長など絵本コンペ審査員の仕事も多く、2024年は上海チルドレンズ・ブックフェアで国際審査員を務める。著作に『ようこそ じごくへ』『日本の絵本 100年100人100冊』(玉川大学出版部)、訳書に『ナンティー・ソロ 子どもたちを鳥にかえたひと』『ハシビロコウがいく』(BL出版)、『わたしを描く』(あかね書房)、『旅するわたしたち On the Move』(ブロンズ新社)など。JBBY副会長。絵本の読めるおそうざい屋「83gocco(ハチサンゴッコ)」を東京・市ヶ谷にて共同主宰。www.83gocco.tokyo

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