- 2023.07.08
チョコレートは何からできている? ザ・キャビンカンパニーが手がける新作絵本『ミライチョコレート』制作発表会
6月29日、東京・六本木ヒルズカフェにて、株式会社明治の協力のもとに発信される絵本『ミライチョコレート』の制作発表が行われました。
絵本を手がけるのは、『がっこうに まにあわない』(あかね書房 2022年)で、第28回日本絵本賞を受賞した絵本作家/美術家、ザ・キャビンカンパニー(阿部健太朗、吉岡紗希)の2人。現在、大分県由布市の廃校を再利用したアトリエから、絵本、立体造形、アニメーションなど、さまざまな作品を生み出しています。
カカオをテーマにした絵本『ミライチョコレート』の舞台は、チョコレートがなくなった1000年後の世界。主人公の少女マヤが、「チョコレートとは何か?」を探求し、その原料であるカカオに出会う冒険ストーリーです。
絵本の制作にあたり、生産地から取り寄せてもらった本物のカカオを「体験」したという阿部さんと吉岡さん。実際に果肉を食べてみると、バナナやライチのようなトロピカルな味がして、カカオが南国のフルーツであることや、ぬるぬるした果肉に包まれた種(カカオ豆)からチョコレートがつくられるという事実に、改めて驚いたと言います。
そして会場では、絵本の発売に先がけ、物語の世界観をぎゅっと閉じこめたイメージ画がお披露目されました。
F40号程の大きな支持体に描かれているのは、色とりどりのカカオの実や、主人公の少女マヤ、進化した姿のシカとイノシシなど。全体的にサイケデリックなカラーリングが印象的で、西暦3024年を舞台にしたSFの雰囲気を醸しだしています。青い髪の少女マヤは明治の板チョコを手に持ち、手前のシカとイノシシがくわえている旗には、カカオの実からチョコレートができる工程がたどられています。
©The Cabin Company
「1000年後には今よりもっと温暖化が進み、もしかすると日本のどこかでもカカオが育つようになっているかもしれない」。そんな想像から、物語の舞台を設定したというザ・キャビンカンパニーの2人。その背景には、大分県のアトリエの状況も影響していると明かしてくれました。
「地域ではどんどん過疎化が進み、日々、私たちのアトリエの周囲に植物たちが迫ってきているのを実感しています。未来では、もしかすると今よりもさらに一極集中した都市の周りに熱帯植物が生い茂り、土地を開発してきた近現代とは逆に人工物が自然に侵食されているのかもしれません」
また、絵本の大きなテーマは、少女マヤの体験を通して、絵本を読む子どもたちにチョコレートができるまでの工程をきちんと知ってもらうこと。
「主人公マヤちゃんの名前は、マヤ文明から採りました。日本とカカオの産地は遠いので、そもそもカカオがどんな植物で、どうやってチョコレートがつくられているのか、実際に見て知る機会はほとんどありません。絵本を読むことで、チョコレートだけでなく、ふだん自分たちが口にしている食べものがどうやって届けられているか、考えるきっかけになればうれしいです。未来がどういう状況になっているかはわかりませんが、子どもたちがどうか笑っていてくれますようにと願いながら絵本を制作しました」
『ミライチョコレート』は、現在鋭意制作中で、2024年1月に白泉社より発売予定。完成が待ち遠しいですが、どうぞお楽しみに!
Profile
ザ・キャビンカンパニー
阿部健太朗と吉岡紗希による二人組の絵本作家、美術家。1989年、1988年、ともに大分県に生まれる。大分県由布市の廃校をアトリエにして、絵本・立体造形・アニメーションなど様々な作品を生み出し、国内外で発表している。デビュー作『だいおういかのいかたろう』(鈴木出版)で第20 回日本絵本賞読者賞、『がっこうに まにあわない』(あかね書房)で第28回日本絵本賞受賞。絵本に『オフロケット』『どうぶつパンパン』(白泉社)など、多数。 the-cabincompany.com
取材・文/木村帆乃