- 2022.06.15
ふつうの展覧会なわけないでしょう 「ヨシタケシンスケ展かもしれない」レポート
いまや新作を発表するたびにベストセラーを記録する絵本界のスーパースター、ヨシタケシンスケさん。
2022年4月9日(土)より東京・世田谷文学館にて、ついに「ヨシタケシンスケ展かもしれない」がスタートしました!
「ヨシタケシンスケ初の大規模な展覧会らしいよ」
「『かもしれない』って何?」
「それってホントに展覧会なの??」
そんなギモンが頭をよぎったあなたのために、MOEが会場の様子をいち早くレポートします!
一般的に、絵本作家の展覧会といえば原画を鑑賞するもの。でも「ヨシタケシンスケ展かもしれない」には、そんな既成概念は通用しません。
ヨシタケさん自らアイディアを出しまくり、展示にふかーく携わったとなれば、これはもう百聞は一見にしかず。
期待に胸を膨らませて会場に入ると、まずはダンボールでつくられた展覧会場が。
いかにも手づくりな雰囲気が、なんともほほえましい風情を醸しだしていますが、これってメインビジュアルに載ってるアレじゃないですか!


「ヨシタケシンスケ展かもしれない」のイメージ ©Shinsuke Yoshitake
メインビジュアルを再現するため、ヨシタケさんに座ってもらいました。
ダンボールをくりぬいた小さな扉に「いりぐち」と書いてあり、この中に「ヨシタケシンスケのすべて」が詰まっていると思ったら、ちょっとゾクゾクしちゃいます。
ガリバートンネルで小さくなって、ダンボールの中に入った先がこの会場につながっている……そんな空間の歪みを疑似体験できるような導入部です。
ああ、「ヨシタケシンスケ展かもしれない」に来たんだなあ、という感慨がひしひしと襲ってきます。
壁一面にどーん! と並んだ小さなスケッチの数々。実はこれ、ヨシタケさんがいつも持ち歩いている手帳の実寸大の複製原画なのです。

思いついたことや考えたことを、その場でスケッチする習慣があるヨシタケさん。ここに書き留めた小さなアイディアが、絵本に発展することも少なくありません。
ヨシタケさんの発想の源や、深層心理が見え隠れしているかも……。
一枚一枚じっくり読んでいると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。

やがて絵本の種が実を結び、後に原画として完成することになります。
ヨシタケさんは絵本を出版する以前から、造形作家やイラストレーターとして活躍してきました。
会場には、過去に制作した立体作品の展示や、本展のためにつくられた来館者参加型のアトラクションもあります。

学生時代に制作した「カブリモノシリーズ」と題した造形作品。
クスッと笑える不思議なコンセプトは、現在のヨシタケさんにそのまま繋がるものが。
また、「会場から悲鳴が聞こえるようにしたかった」と語るヨシタケさん。
会場には、大人も子どももみんながいっしょになって楽しめる工夫がたくさんあるのです。

本展のためのアトラクション「じごくのトゲトゲイス」と「てんごくのふかふかみち」。
ぜひトゲトゲのイスに座って、苦悶の悲鳴をあげてくださいね(感染対策は万全に!)。

会場1階には、最新作『かみはこんなに くちゃくちゃだけど』(白泉社刊)の顔ハメもあります。
ぜひ思い出の1枚をどうぞ!
むき出しの木材や、ジップロック、フセン、スタンプなどを使った会場は、入り口の「ダンボール会場」と響きあうように、手づくり感が満載。
あちこちにペタペタ貼られた黄色いフセンは、ヨシタケさんの描きおろしコメントです。

オープン当日の朝まで描いていたという、ライブ感あふれるフセン。
板と板のスキマや小さなスペースにも、ヨシタケさんの私物コレクションが。
かくれんぼみたいなさりげないしかけで、すみずみまで見逃すことはできません。

『ヨシタケシンスケ展かもしれない 公式図録 こっちだったかもしれない』(白泉社刊)は、ヨシタケさんが大好きだという「ちっちゃくて分厚い本」に。496ページもの大ボリュームにクロス装、金の箔押しというゴージャスな佇まい。

アイディアスケッチや原画、私物コレクションの他、ヨシタケさんが「展覧会のために考えたけどボツになってしまった」大量の構想メモもたっぷり収録。図録でしか読めないコンテンツで構成されたスペシャル仕様になっています。
今日という1日の記念に、おみやげを持ち帰りたいのが人の心。
ヨシタケさんは、限定グッズのためにオリジナルイラストをたくさん描きおろしました。絵本とはまたちがった楽しみがあるのも、ファンにはたまりません。

会場を後にする頃には、ヨシタケさんの「頭の中=スケッチやメモなど」と「頭の外=絵本やグッズ」の関係がぼんやりと浮かび上がってくるような気持ちに。
「かもしれない」の可能性がどんどん広がり、ヨシタケさんの驚異の想像力に驚かされると同時に、自分の未来にもちょっぴりわくわくするすることができるのが「ヨシタケシンスケ展かもしれない」なのかもしれない……。
訪れた人みんなを笑顔にしてくれる、ヨシタケシンスケさんからのプレゼントのような素敵な展覧会です。

なお、MOE2022年5月号(バックナンバー発売中)でも「ヨシタケシンスケ展かもしれない」の魅力を徹底解剖!
展覧会のために描きおろした作品や構想メモの他、ヨシタケさんの創作にまつわる貴重なロングインタビューをお届けしています。
ぜひ、本展の予習&復習にご活用ください!
2022年7月15日(金)~8月28日(日) ※7月29日(金)以降の全日程 時間指定予約制
市立伊丹ミュージアム
兵庫県伊丹市宮ノ前2-5-20
開館時間/10時〜18時(入館は17時半まで)
休館日/毎週月曜日(祝日の場合は開館、翌平日休館)
観覧料/一般1,000円、大学・高校生700円、小・中学生400円
主催/市立伊丹ミュージアム[伊丹ミュージアム運営共同体 / 伊丹市]、朝日新聞社、白泉社
共催/伊丹市教育委員会
協力/アリス館、PHP研究所、ブロンズ新社、ポプラ社
グラフィックデザイン:大島依提亜 / 会場構成:五十嵐瑠衣
展覧会の観覧券は、当日来館時に1階チケット受付にてご購入いただきます。
※学生の方、伊丹在住の65歳以上の方、各種お手帳をお持ちの方は、いずれも証明できるものをお持ちください。
※各種割引をご利用の方も時間指定のご予約をお願いいたします。1階チケット受付にて観覧券をご購入の際に、割引を証明するものをご提示ください。
※20名以上の団体での見学は平日に限り受け入れます。ご希望の方は、必ず事前に市立伊丹ミュージアム(電話072-772-5959)までご連絡ください。ただし、閉幕間近の平日は混雑が予想されますので、お断りさせていただく場合があります。
「ヨシタケシンスケ展かもしれない」会期中、8月の土日祝の時間指定予約については、すでにインターネットによる予約を開始しております。
※7月22日(金)~28日(木)は事前予約制ではありませんが、新型コロナウイルス感染症対策のため入場制限を行います。 各日10時~ 正面入口にて整理券を配布いたします(小学生以上の1名様1枚限り・当日のみ有効)。予定枚数に達し次第、配布終了とさせていただきます。詳しくはこちら。
※7月29日(金)以降の会期中の全日程(平日・土日祝どちらも)についても、7月23日(土)11:00よりインターネットによる時間指定予約を開始します(準備中)。ご予約のない方はご入場いただけませんので、必ず事前にご予約の上、ご来館ください。
時間指定予約はこちらから >
● 時間指定予約の導入日
1. 2022年8月6日(土)・7日(日)・11日(木祝)・13日(土)・14日(日)・20日(土)・21日(日)・27日(土)・28日(日):受付中
2. 2022年7月29日(金)〜 全日程:7月23日(土)11:00より受付開始
※1回5名様までご予約いただけます。
※入場には別途、観覧券の購入が必要です。当日、来館時に1階チケット受付にてご購入ください。
※予約時間枠内であれば、いつでもご入場いただけます。開始時間直後は混み合う可能性が高いため、時間を空けてお越しください。
※予約時間枠を過ぎた場合は入場できませんのでご注意ください。
※入場後は閉館(18:00)まで時間制限なく滞在可能です。ただし再入場はできません。
※キャンセルは予約日の9:30までにキャンセルフォームよりお手続きください。予約日9:30以降の変更はできません。
※お電話でのご予約、キャンセル、変更は受け付けておりません。
※未就学児はご予約の必要はありません。
※招待券をお持ちの方のご予約は必要ありません。直接、1階チケット受付までお越しください
2022年9月23日(金・祝)~11月20日(日)
ひろしま美術館
広島県広島市中区基町3-2 中央公園内
2022年12月10日(土)~2023年1月15日(日)
松坂屋美術館
愛知県名古屋市中区栄3-16-1 松坂屋名古屋店 南館7階
2022年4月9日(土)~7月3日(日) ※日時指定券は完売しました。
世田谷文学館 2階展示室
東京都世田谷区南烏山1-10-10
主催/公益財団法人せたがや文化財団 世田谷文学館、朝日新聞社、白泉社
協力/アリス館、PHP研究所、ブロンズ新社、ポプラ社
後援/世田谷区、世田谷区教育委員会